人気ブログランキング | 話題のタグを見る

風に連れられ旅をする… 旅人 清火(さやか)の写真+言葉
by kazeture
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31


馬鹿すぎて…夏

十代の頃、ぼくは父の強大なエネルギーをかわすために、さまざまな策を講じた。

今回インドに行って実際に会ってみて分かったが、客観的に見て、父のエネルギーは凄まじい。
前へと突き進むエネルギーが。
(それがインドにあんな、ひとつのワールドを創出させた)

ぼくはそんなんじゃなしに、もっと曲線を描いてひょろりとした波動を持っているから、まともに渡り合ったらたたきつぶされてしまう。

だから自己保存のためにかわそうとするのは当然だった。

ぶつかる前にかわす。避ける。逃げる。
そうして自分を守った。



ほんとに、ぼくと彼はぜんぜん違う…と今回つくづく思った。

もし彼の意見に「違う」と反論したなら、彼は本気で総力をあげてつぶしにかかる。論争して論理的に勝とうとする。
ぼくは論理的な人間でない(そんなに左脳的でない)うえに、勝ちたいと思わない。
ということは、これはもう、「いるとこが違う」のだ。
優劣の問題とかじゃなしに、いるとこが違う。
それをはっきりと知覚した。

それを知覚できたことは収穫だった。
10歳のぼくに対し33歳の父は自分の土俵に乗ることを強要し、それを拒むぼくをなじった。意気地無し、卑怯者、と。
それでぼくは罪悪感を抱えた。抱えっぱなしだった。

でもそれはおかしいことだったのだ。

ぼくの土俵に彼が乗るという可能性を彼は吟味しなかった。中間地点を探ることもなかった。
ぼくと彼の違いに意識を及ばさずに、やみくもに自分のほうに来いといった。

だけど、もともと年齢差があるうえに、筋力や勢い、ごり押しパワー、理屈っぽさの面でまさる彼がそれらで勝負できる自分の土俵にぼくを引っ張りあげて渡り合おうとするのはフェアじゃないじゃないか。

とにかくぼくはべつに悪くないし、無理に抱かされた罪悪感なんか、ヒマラヤの谷底にポイッと捨ててしまえばよかったのだ。

それがわかって、すっきりした。



そんで、だから、当時(十代の頃)のぼくは自分が傷を受けないために力を尽くすことになる。

なぜかぼくは昔から「傷を受けちゃいけない」という思いを強く持っていた。

ぼくは傷を受ける前に策を講じることに力を注いだ。

かわした。避けた。逃げた。消えた。いないふりをした。息をひそめた。黙りこくった。目を伏せた。感情を一切表さなかった。

危険に遭遇した獣と同じ。
それしか、手はなかったと思う。

で、それはそれで、そのときは良かったのだ。

ぼくはそうして自分を守り抜いたから。

17の時に父が家から出ていき、会わなくなった。
その後、ぼくはなるべく父やその影を遠ざけて生きた…つもりだった。



だけど…。

ぼくには、ある習慣がついていた。

それは、ぼくを否定、批判してくるエネルギーを感じたら、すぐさま速攻で逃げ出してしまう、という習慣である。

これは、相手が父の場合にはあまりに強大なエネルギーを相手にしていたため、それで良かった(それしかなかった)のだ。身の危険があるから。

だけど、父ではない相手に対しても、そうしてしまった。

癖。習慣。反射。もあるだろうし
アレルギーみたいになって過剰反応してしまっていたのかもしれない。
「いなくなりグセ」が抜けなかった。

しかも、それどころか
ぼくは逃げ出すときに
「ざまあみろ」的な、なんか間接的にカタキを討つかのような感覚すら覚えていた。

そのひとじゃないのに。
投影してしまっていた。

父のいないところで、その亡霊と戦うかのように。
その幻影に舌をだして笑い、かりそめの満足を得るかのように。

それでぼくは多くの人を傷つけ、悲しませ、途方に暮れさせ、また、失ってしまった。

その状態に気がついた。
やっと。
いまごろ。

馬鹿だ!
馬鹿すぎる。
どうしようもない。

馬鹿すぎる…
けど、でも
気づけてよかったと思う。

旅に出た意味は、あった。



ごめんなさい、
多大な迷惑をかけた人々。

ありがとう、
それでも見守ってくれた人々。

さよなら、
なにかわからぬものに
おびえた日々。

さよなら、
なにかわからぬものから
逃げ続けた日々。

わけもわからず
移動し続け、歩き続けた日々。

おびえる対象の亡霊も
逃げだす対象の幻影も
もう、ない。

まっしろ。

こんな馬鹿なぼくだけど、
まだ行く手に面白いこともあるだろう。

ぼちぼちいこう。

日没まで、まだ時間はある…。
by kazeture | 2009-08-08 11:09 | Comments(2)
Commented by よ☆し at 2009-08-08 15:19 x
わかる気がするなあ。
その感覚。

そういえば軽井沢にふらり来てくれたのは、ちょうど2年前になるね♪
Commented by kazeture at 2009-08-11 16:50
わかる?

軽井沢、またふらっと行きたい。
<< ぼくが逃げたその先に 手紙 >>