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風に連れられ旅をする… 旅人 清火(さやか)の写真+言葉
by kazeture
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ローカル・バス

(「そーだ! ベトナムに行こう」のつづきです)

ラオス・サバナケットのバスターミナルから
ベトナム・フエ行きのバスは
夜10時、定刻どおりに発車した。

これは「ローカル・バス」という名前で
「VIPバス」というのより200円安い
900円である。

900円でベトナムまで連れてってくれる…
妙に安い。
いったいどんなバスなのか?

ボロい…
韓国製の中古だ。ハングルがそこここに書いてある。
エアコンはない。
冷房は、風。車内を風が吹き荒れる。
乗降口も開きっぱなし。

そしてぎゅうぎゅうに客は詰め込まれる。
ぼく以外はみなラオス人のようだった。
待合所で空き缶を蹴飛ばしまくってるうるさい
おっさんがいて、なんかいやだなと思ってたのだが、
なんとその人がぼくのとなりに
きゅうくつそうに座っていた。
ぼくもきゅうくつだ。

走り出すと、車掌のような人がCDをセットした。
ら、前方のテレビ画面に1分間、映画「ターミネーター」が
始まるような画像が映った。
ターミネーターを見ながら行くのか?と
ドキドキしたが、それはそれっきり消えた。
そしてラオス音楽が大音響でかかりだした。
男と女のデュエットの歌だ。
えんえんと流れる。
それを聞きながら行く。

暗い…
田舎だ。田舎の道だ。
ときおり、人や、バイク、自転車、牛、ヤギ、水牛などを
追い越す。

ぼくは夜のバスの限られた視界に目を凝らしていた。
夜だとはいってもなにも見えないわけじゃない。

眠ろうとする。
が、バスの振動が強すぎて眠れない。
それからわりと頻繁に運転手が急ブレーキをかける。
道に穴ぼこや盛り上がりがあるためだ。
それも眠りをさまたげる。

3時間走って夜1時、どこかに着いた。
ベトナムとの国境はもう近いと思われる。
車掌に身振りで「降りろ」と言われた。
倉庫と、食堂のようなのがある。
ラオス人たちはその食堂にただ座っていた。
人々が倉庫からバスにいろんな物を積み込んでいた。
そのために停まっているらしい。
手持ち無沙汰なぼくは少し離れた道端に
ぽつんと座っていた。

えんえんと続く積み込み。
なにもすることがない。
誰とも言葉が通じない感じだ。
眠い。
バスの座席にいさせてくれたら
眠れるのに。

3時、ようやく積み込みが終わった。
当然、バスはまた走り出すのだろうと思っていた。
走らない。
誰もいなくなった。
気がついたときには誰もいなくなっていた。

ぽつーーーん。
ラオスの山の夜道にひとり。
なんなんだ。みんなどこ行ったんだ。
どこかに溶け消えてしまったようだ。

考えたんだが、
いまは夜3時で、きっと国境のイミグレーションが
開くのが朝なんだろう。
それで朝まで待つのだろう…
しかし何の説明もなかったのが
変な気分だった。

待った。
暗い。
寒い。
ここは山で標高が高いのだろう。
冷え込む。鳥肌が立つ。
バスに入れないのかと開けようとしてみたら
閉まっていた。

すこし散歩する。
橋があり、水音がする。
川が流れる音、コポコポいっている。
そしてその音のわきに、
カエルの鳴き声がした。
非常に懐かしい気分におちいった。
上を見ると満天の星空、
さそり座が冷えながら熱く燃えていた。

またバスのあたりに戻る。

若い女の人が突如現れ、
「チェンジマネー?」と言ってきた。
驚く。朝の4時。暗い夜道で突然に。
「いや、必要ない。もう両替した」といっても
食い下がる。
その女は去った、が、新手が現れた。
3人いる。同じことを言ってくる。
なんなんだ…
どうもベトナム人らしい。ラオス人とは
なにかが違う。
芝居がかってて、計算高い感じが
ちらりとする。

もうオレは眠い。寒い。うるさい。
なにも言わないでくれ。
一睡もしてない。

5時。
別のバスが来る。
バスピープルが降りてくる。
その人たちの中に埋没するぼく。
なんとなく孤独はまぎれるが、
ぼくと同じバスの仲間はいないのだ。

5時半、朝ごはんの屋台を出すおばさんがいる。
まだ真っ暗だ。

6時、空が明らみだす。
そのとき、どこからともなく
ぼくのバス仲間が出現した。
よおーーく見ると、食堂の奥のほうの
蚊帳の中から出てきたらしい。
店の人と一緒に。
店の人と一緒にそこで仮眠してたのか。
そんなん、オレにわかるわけがない。し、
わかってもなかなかできない。

みんなはバスに乗り込んだ。
6時半、走り出した。
7時、イミグレが開いた。

おめでとう。
無事、ベトナムに入れました。

やっと入れた。
途中、一睡だけ、したと思う。
フエには11時に着いた。
ぜんぜん知らない町だが、にもかかわらず、
やっと着いた感じがすごく強くて
「憧れの町」に着いたような気分だった。


こうしてぼくのベトナム生活ははじまった。
by kazeture | 2009-03-31 14:02 | Comments(0)
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