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風に連れられ旅をする… 旅人 清火(さやか)の写真+言葉
by kazeture
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あんたはマレー系


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マレーシアのジョホールバルで出会ったミキは僕に


「あんたは、マレー系やね」


と言った。



僕は25歳、ミキは21歳だった。



1997年、春。


この時僕は、これからマレー半島を北上しようとしていた。


ミキは一人でマレー半島を南下して来ていた。



その、逆方向に向けてすれ違う一瞬、僕らは交差した。




マレーシア南端、シンガポールのすぐ近くの港町ジョホールバルのバスターミナルにいると、向こうからパタパタと女の子が駆けて来て、話しかけてきた。


それがミキだった。


兵庫・宝塚出身の、リュックを背負った小柄な旅人。




ミキは情報を欲しがっていた。


僕は「地球の歩き方」を見せた。




僕らはバスターミナルの中にあるマレー料理店に入った。




ミキは僕に


「いつもそんなに、ボーッとしてんの?」


と、きいた。


「うん」


「なんか、あんたは、マレー系やね」


「え?」


「中華系よりはマレー系やね」


「マレー系ってどういうこと?」


「すべてが反対やん。中華系とマレー系って。マレー系はゆったりのんびりしてるし、中華系はセカセカ、ギャアギャアしてる」


「はあ、そういうことか」




僕はただボーッとたたずんでることが多い。



マレー系と言われて、なんか嬉しかった。


僕もマレー系ののんびりムードは気に入ってた。





マレー半島にもともと住んでたのがマレー系住民で、あとから中国からやって来たのが中華系だ。


(マレーシアの人口比はマレー系6.5割、中華系2.5割、インド系1割で、多民族国家となっている)


今ではマレーシアの中で中華系が経済的な部分を握っていると言われる。


でも、そもそもマレー系の人たちには「受け容れる」性質があった。


だからこそ中華系の人たちはたくさん入って来れたし、のびのびできたし、また共存もできたのだ。


そんな懐の深いマレー系に僕は似ているとミキは言う。




「ミキは?」


「うーん。どうやろ。わたしは中間かな。セカセカすることもあるし」





ミキはタイとマレーシアが好きで、今日まで一ヶ月半、旅していた。


そしてこれからシンガポールに渡って三ヶ月、英語を勉強しようとしている。


三ヶ月間一人で、苦手な英語を、苦手なシンガポールで学ぶということを決断したのだ。


この目の前の小柄な21歳の女の子は。





「いよいよ来てしまったかと思うと怖いよ」


とミキはぽつりと言った。


顔色が優れず、食事が進んでない。


本当に怖がってる。明日からの生活を。



ミキは「逃げたくなかった」のだという。


苦手なことから。



アジアの旅が好きで、将来アジアのどこかで旅行や観光に関わる仕事をしたくて、


英語は苦手だけど、学びに来た。



シンガポールも苦手…というか、キライだった。 


だけどキライなままではいけないと思った。



自分以外に一人も日本人のいない環境に三ヶ月間自分を放り込み、自分を試す。



そしてこの時、今からバスに乗ってシンガポールに入るという、もうギリギリの刻限だったのだ。



僕は「こいつ、すごいな」と思った。


震えて怖がってるけど、それくらい怖いことに、たった一人で向かって行ってる。


すごい勇気の持ち主だ。



僕は彼女を応援する気持ちを持った。


何か言いたい。


でも何をどう言えばいいのか。



「そうか…」とだけ言って、


ただ一緒にバスの時間までをボーッと過ごした。


マレー系のように。





ふたりはバスターミナルで、それぞれが出発するバスを待っていた。 


行き先は逆。


そして、僕のバスが先に出ることになった。


僕らは路上で別れた。




「元気で頑張ってな」と僕は言った。


「よい旅を」とミキは言った。




僕が乗り込むと、バスは動き出した。


ミキが頭の上で手を振っている。


その姿はほかのバスに隠れ、見えなくなった。


その時バスが風船を踏み、「パァン!」と大きな音が鳴った。


暴発した祝砲のように。



勇敢な旅人の前途を祝すかのように。




ロータリーを周り、もう一度小さくミキが見えた。


あいつはもう前を見つめ、歩き出していた。








それっきりミキとは音信不通だ。


あれから22年が経った。


今でもあのちびっこい女の子を「いちばん勇敢なヤツ」として思い出す。







# by kazeture | 2019-05-20 13:23 | 1997マレーシア

思ったようには運ばない

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旅は思ったようには事が運ばない


思ったように事が運ばないのが旅だ




そして人生も


思ったようには事が運ばない




人生のいろんな局面で


思いもよらぬ事にぶち当たると


旅で培った精神で対処する




「そんなこともあるさ」


「なんとかなるさ」


と乗り越えてゆく




だから若い時の旅は


あとで役に立つ






思ったように事が運ばなくて


ギャァギャァわめく老人を見ると


旅をして来なかったのかなぁ


と思ったりする




不安な宿無しの夜を


越えたことがなかったんだね



ひとりで夕闇せまる異国の街を


彷徨わなかったんだね







思ったように事が運ぶわけはないし


思わぬまわり道からいちばん面白い発見が


生まれたりするんだよ




「そんなこともあるさ」


ってのんびり口笛吹いて行こう


# by kazeture | 2019-05-19 11:13

いろんな国を通り抜けて

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いろんな国を通り抜けて


いろんな民族を通過してゆくほど


価値判断をしなくなっていった




「いい」「わるい」


「ただしい」「まちがってる」


などという価値判断を


時に人は下す




けど


たくさんの民族のいろんな価値観の中を


通り抜けて行ったら


いいかわるいかの判断など


どっちでもよくなり


めんどくさくなり


下さなくなってゆく




真ん中へんに立って


ぼーっと見てる




「そういうものなんだな」と


そのまま受け容れる




多くの国々を旅した人というのは


そういうふうになる傾向が


あるのではないか




価値判断を下さない生き方は


やってみると楽だ






国境を越えたら価値観がガラリと変わる


ということを繰り返すと


価値観の持つ意味は軽く薄くなってゆく




強く一つのことを主張することが


バカバカしくなる




それはあっち岸に行くとすぐに変わり


反転しうるものなのだ




僕は自分の意見を他人に主張することに


重きを置かなくなる




僕の意見はつねに「違う」可能性を含んでいる




僕の意見ははじめから半分「違う」


(向こう岸が見えているから)




だったらゴリ押ししたって


しかたない




自分の意見を他人にわからせる


それは重要なことじゃない




となりにいる、どこの国の人かもわからない人と


ボーッと川を眺めながら


お茶を飲んでいる




それだけでいい




そういうことを知った


だから


国境を越えて行った意味は


あったのだと思う








価値判断を


どんどん下しまくってる人


というのをたまに見かける




その人は「あ、今、俺、価値判断を下してるなぁ」などと自覚もせずに


クセでやっている




「いい」「わるい」「ちがう」「まちがってる」……




そういう人と接すると


僕はすごく疲れる




その人の下す価値判断など


どうでもいいのだが


その人はそのどうでもよさを知らず


さも重大げに判定して押し付けてくるので


疲れるのだ









価値判断をしない在り方は


僕が旅の中で学んだ大きなこと


の一つだと思う




川は今日も流れ


あっち岸でもこっち岸でも人は


暮らしている


# by kazeture | 2019-05-14 17:31

冒険の旅

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冒険とは


危険を冒すこと




ヨボヨボの体で


壊れやすい膝を抱え


高山病になりやすい体質で


ひとりで立ち向かったら


普通のヒマラヤトレッキングコースも


冒険の旅となった




どこにだって


冒険は現れる




8000m峰の難ルートに


挑戦するような


目立つ人だけじゃない




人には知られない冒険者が


世界には


たくさん潜在している




目が見えずに電車に乗る人


松葉杖でバスに乗る人


車椅子で道を渡る人




既存の規範に合わず病気扱いされて


苦しみながら世の中を歩く人




自分の国を追われた人




「難しいことに挑戦してる度合い」



もしきちんと計測すれば


どうなるのだろうか




強い者の冒険は目立ち


弱い者の冒険は目立たない




けど


「弱い者の冒険」のほうが


より難しいことに挑戦しているの


かもしれない




あなたが今日した冒険だって


ものすごいことなのかもしれない






# by kazeture | 2019-05-11 15:20

いくらワイファイつないだって

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いくらワイファイつないだって


インターネットにつながったって


どこにも行けない


だれにも会えない


なんにも触れない


なんにもできないよ




と、


ヒマラヤからおりて


数日間の断絶後に


またワイファイをつないだとき


思った




僕の満足感、充足感は


iPhone画面の中にはない


と知った


ヒマラヤのふもとで






(↑と、ヒマラヤのふもとで書いた


で、いま


「なんにもできない…ことはない…


遠く離れた人を面白がらせることだってできるさ」


と、ピコポコピコポコ投稿している)





# by kazeture | 2019-05-11 13:39

生きてる

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自分が「まだ生きてる」と




伝えたいのは 









「生きてる?」って




ききたいのは 









山奥から命からがら生還したら




そんなことが




浮き彫りになったりする










僕らはいま




同時に地球で生きている








会話を交わせるのは




同時に地球にいるこの短い瞬間だけ





# by kazeture | 2019-05-10 12:57

フッと

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フッと、気持ちのいいほうへ行く。


かすかなサインをたよりに。




「どっちの道へ行くか」って 


旅の中で(人生の中でも)


重要なポイントだったりするけど


その判断はかなり精妙だ。


サインはかなりかすかだから。




そっちの道のほうから


フッとなにかが吹いてきたような


感じ。




で、フッと視線を向けて


「なんか良さそうやな」と


そちらへ歩き出す。




自分をできるだけ


軽くやわらかく


なにもない状態に


保っている。




自分を空間に 


浮かべる。




そうして


フッと風を見る。








# by kazeture | 2019-05-09 11:44

暗夜

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生へ疾走するんだ




悲しみの中へ


苦しみの中へ


弱さの中へ


埋没している時期は


終わった




生へ


疾走するんだ




どうやったら


自分が最大限生かされるか


探るんだ




生き抜くことこそが急務だ




そして


生き抜くためには


「快」の感覚に従って


自分の体を運んで行くことが


とても大切なんだ




「美しい景色のほうへ」と


行かないと


死ぬんだ




「快」「美」「笑い」



生に直結している




自分を生かす方向へ


つながってる




光はどっちにある


道はどっちにある


生はどっちにある




すでに街は


崩れはじめてる




瓦礫の山が


ケムリを立ててる




目を開け




自分の直感に従い


本能に従い


生の領域へ


走れ




笑い


楽しみ


快く


現世を全うするんだ




命を燃やせ


燃やし尽くせ




快感と美と笑い


のある方へ疾走し


危ない橋を渡って


生きのびるんだ




「生」の領域は


「絶対」だ


間違いはない




生へ向かうことに


間違いはない




かならず


そこへ行け




自分の感覚だけを頼りに


頼りなげな世界を


暗夜


たった一人


駆け抜けるんだ






# by kazeture | 2019-05-08 12:30

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「旅に出れば なんとかなる」
という思いが
僕にはあった。

旅に出さえすれば
全部うまくいく、と。

今回も結果的に
そうだった。

行く前に抱えていたことは
一掃された。

旅の中で
大きなことが起こって
終わってみれば
旅の前に抱えていたものは
消え去っている。

旅の途上
異国の辺境の地で
「一人で全身全霊でぶつかる」
ということをする。

暴風や痛みや
失敗や戸惑いや
孤独や暗闇を
一人で越える。

それは何よりの
特効薬だ。

僕を
自分の軸
ど真ん中に
引き戻してくれる。

(やっぱり僕は旅人だし
旅の中で
最も生きる
活性化する)

「旅に出れば なんとかなる」
というのは
そういうこと
だったんだな。

1ヶ月だけど
行ってよかった。

僕は
僕になって
戻ってきた。




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おしまい。

ネパール旅の話、これで終わりです。



2019.4.30




# by kazeture | 2019-04-30 10:02 | ネパール2019

一度死んで、それでも生きてるものは何か

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飛行機で外国へ行きたい

飛行機で外国へ行くと
自分の気持ちがわかる

飛行機で外国へ行き
自分の気持ちを感じたい

飛行機で外国へ飛んでった後でも
同じことを思うなら
それは本物だ


飛行機で外国に行っても

振り落とされなかったのだから


ものすごい高速

ものすごい高空

を経て

全く別の世界に降り立ち

暴風の中を突き進み

気圧のちがいを乗り越え

生死の境を突破して

それでも生きてる思いは

本物だ


(僕は飛行機が苦手で

高速と高空を越えるとき

仮死状態みたいになるから)


だから僕は

強烈に外国に行きたくなる


一瞬、すべてを忘れるほどの

暴風を突き抜けて

一度、死んで

それでも生きてるものは

何か


僕の中に

そんなに強く

熱いものは

生きてるのか

燃えてるのか


生きてるのなら

燃えてるのなら

それは何

知りたい


だから、一度死ぬような

強烈な体験を

求めるんだ



# by kazeture | 2019-04-29 17:50 | ネパール2019