|
YOU ARE GOOD LUCK!!
2019.4.5.
山から下りてきて、ふもとの村シャブルベシ(標高1503m)で一日のんびり休む。 グァバジュースが美味い。 からだがこれを欲してる感じで、ごくごくと飲む。 頭痛は消えた。 そして、山を下り終わるまでずっとあったしゃっくりも、ようやく消えた。 膝が、両方ともに痛む。 ので、ヨチヨチ歩いている。 が、杖が必要なほどではないので、 しばらくしたら痛まなくなりそうな気がする。 宿の女将さん、チャンクーが糸を紡いでいる。 チャンクーが作ってくれる、チキンモモ。 とても美味しい。 一日のんびり過ごした。 そのまま暮れていった。 翌朝、バスでこの村を発つ予定だ。 2019.4.6. 朝。 すごい雨が降っている。豪雨だ。 それを見て、宿の女将チャンクーは 「あんた、めっちゃ運がええな!!」 (YOU ARE GOOD LUCK!!) と僕に叫んだ。 僕が山を下りた後で、この豪雨になったから。 かたわらでは、今から山に登ろうとする西洋人トレッカーたちがしょんぼりしている。 「めっちゃ、運がいい」 その言葉が、僕に響いた。 なにか、今回の山旅の全部を象徴するかのように。 ひょっとしたら 僕はすごく運が良かった。のかもしれない。 高山病になって頭痛いし熱出るし吐き気するししゃっくり出るし膝は痛むし、山の上にちょっとしかいられなかったし、 ぶつくさ言っている。 けど。 もっともっとひどいことにだってなった可能性があるのに、 絶妙にうまく切り抜けた のかもしれない。 岩場でコロリと転んでたら、 岩のくぼみに膝を逆向けに折ったまま転がり込んで岩の間に挟まり、 誰にも見えないところで抜けなくなって三日三晩苦しんだ挙句 ユキヒョウにペロリと食べられて 骨になっていたかもしれない。 なっていないほうの未来はわからなくて、 ただ想像するしかない。 そもそも、天気だってものすごく良かった。 いま、こんな豪雨が降って、いま山にいる人たちはみんな降られているわけだ。 こんな中を行くのはものすごく大変で辛くて面白くなくて危険だ。 「あんたは強運の持ち主や!」 って、 ほんとに そうなのかもしれない。 僕は肝っ玉かあちゃんチャンクーの この言葉をありがたく受け取り、 ポケットに携えて行こう、 と思った。 写真左がチャンクー、右はプルップ。 チャンクーの作るモモ、おいしかった。 プルップのいれてくれるミルクティー、ホッとした。 やっぱりチベタンとの生活はなごむなぁ。 ありがとう。 THANK YOU VERY MUCH!! そうして 僕は雨の降るシャブルベシを後にし、 バスで山を下りた。 #
by kazeture
| 2019-04-25 14:17
| ネパール2019
|
Comments(0)
ランタン谷 6日目 1983m→1503m
2019.4.4.
7:25 出発。下山の3日目。 Bamboo集落、ありがとう。 なんか居心地がよかった。 9:00 Land Slide Lodge に到着。 ホットオレンジを飲む。 ここのオヤジさんが話しかけてくる。 すこしだけ日本語を話せる。 「あんな、日本って毎日地震あるん?」と、オヤジさん。 「いや。あるけど、毎日じゃないで」 「そうか。ここ、2015年の地震、ひどかってん」 「え、どうなったん?」 「ぐっちゃぐちゃ。今ある建物は、前のよりだいぶんちっちゃくなってもーた」 「そう…」 なにしろここはLand Slide Lodge。地すべり小屋。というくらいだから、よく地すべりが起こるのだろう。 さらにオヤジさんは 「おれ、33歳」と言う。 「えっ?」 思わず、顔を見合わせる。 「33?」 「そう。いや、ホントは54」 「サンジュウサンサイ」だけは日本語で言えるから言ったらしい。 で、「ゴジューヨン」の言い方を教えておいた。 オヤジさんは何度も「ゴジューヨン!ゴジューヨン!」と繰り返し練習していた。 おそらく、つぎに来る日本人に言うのだろう。 地すべり小屋のかまど 10:10 1645m Domen ドーメン 到着。 チベタンばあちゃんと仔猫 頭痛は 消えた。 発熱は ない。 しゃっくりは ある。 膝痛は ある。 歩け、歩け。 もうちょっと。 道の最後に現れる てんとう虫。 僕は以前「日本縦断散歩」というのをしたとき、 南の果て、沖縄で最後にてんとう虫に会って 閃きを得たことがある。 また、最後にてんとう虫。 お祝いに来てくれたのかな。 もうちょっとだ。 歩け。 めざす村が見える、 ↑細かい部分の意匠がとても美しい。部屋の中に入ってみたい。 そして 12:30 標高1503m Syabrubesi シャブルベシの 宿に 着いた! 住み慣れたわが家(行きに一泊した宿)に着くと ドラえもんがネパール語をモニャモニャしゃべってた。 やったー! 着いたよ。 ヨレヨレだけど、なんとか無事にたどり着いた。 生還。 #
by kazeture
| 2019-04-23 19:50
| ネパール2019
|
Comments(0)
ランタン谷 5日目 3140m→1960m
2019.4.3.06:33 出発。
標高3140m。下山2日目、歩き出す。 頭痛は、ゼロではないが、かなり軽くなっている。 熱はない。 ただ、歩き出すと、またしゃっくりが出てきた。 いったい何のつもりなのか? 数秒間に一度、出るし、僕の呼吸や歩調のリズムとは無関係に出てくる。 僕はもう、連日の歩きで疲れてて、歩くだけでギリギリなのに、 さらにしゃっくりに乱される。 とか言ってても仕方ない。 トボトボと歩いていく。 ちなみにここには車道はない。 ジープに乗ることはできない。 乗るなら、ヘリコプターか、馬だ。 ヘリコプターは何十万円かかかるだろう。 馬に乗って下山、というのは、楽だとは思えない。 というわけで僕は安全な場所まで自分の足で最後まで下りるしかない。 3000m以下に入る。 ヒマラヤのヒマラヤらしい景色よ、バイバーイ。 9:40 2770m River Side Lodge 到着。 この天気の良さはかなりのラッキーなのだが、この時点では僕はなんとも思わず、普通のことだと思っていた。 ファンタオレンジを爆飲みしてしゃっくりを撃退する作戦に出る。 しゃっくり、びくともせず、出続ける。 しゃっくり下山、ほんとに困る。 たとえば下山中に喉に槍が突き刺さって困る。とかだと、映画のクライマックスシーンにも使えるだろう。 下山しながらしゃっくりで困る。というのが映画のクライマックスシーンで使えるのかどうか、 しゃっくりよ、よく考えよ。 とかなんとかブツブツぼやきながら、しゃっくり下山は続く。 いつか、もっとカッコいい瞬間も訪れるかもしれない。 生きろ。 もうちょっと生きてみろ。 キャラバンは続く キャラバンは続く キャラバンは続く やつらのキャラバンは延々と続く オレもオレでキャラバンを続ける 木にこういうコケみたいなやつがたくさんぶら下がっているのは、 かなり湿気の多い森だということを表す。 霧で覆われることが多い森なのだろう。 最後まで、足がもってくれますように。 というのも、僕は膝に爆弾を抱えていて、この日、痛くなってきたのだ。 2010年2月に左膝のお皿を真っ二つに割って入院・手術・リハビリしたけど 走れるようにはならなくて正座もできなくて 12級の障害者になっちゃって、 いまもよく痛むしいつ大破して激痛が走るかもわからない状態だ。 大破したら歩けなくなるかもしれない、というのを抱えてる。 そんなんで一人でヒマラヤに突入してるし、ほんとにしゃっくりとかしてる場合じゃないんだ。 注意してさっさと下りろ。 はい、わかりました。 というわけで、下山を続ける。 左や、右の膝が痛くなりながら、 木の杖を使い、かばいながら、歩いて行く。 この木の杖、一本ついているのだが、 膝をかばうのに絶大な力を発揮していた、と思う。 登りの時に泊まったLama Hotelという場所にあるSherpa Hotel。標高2480m。 Sherpa Hotelの女将さんがいたので写真を撮らせてもらう。 宿のカードを「タバで持ってけや!」と言ってガハハハ笑ってた人だ。 ちなみにチベタンは、きわめて何気なく、あっさりと写真を撮らせてくれる。 「写真撮りたいん? あっそー。撮りたいんなら撮れば」って感じで、こだわりの少ない人々やなと感じる。 12:05 2485m Rimche リムチェ GANESHA VIEW LODGE 到着。 ミルクコーヒーを飲む。 ↑サル。 登りの時にも見た、はたおり女性。 14:15 標高 1983m Bamboo バンブー 到着。 8時間かかった。 もーヘトヘトのヨロヨロ。 部屋のベッドにぶっ倒れてると、 窓の外にウシが来る。 でも、会話する元気もなく、放心状態。 あと一日だ。 あと一日で、 下界まで下りられるはずだ。 #
by kazeture
| 2019-04-23 14:33
| ネパール2019
|
Comments(0)
ランタン谷 4日目 3877m→3140m
2019.4.2
午前6時10分。荷物を背負い、歩き出す。 頭が痛い。 高山病のために下山を開始する。ので、全く面白い気分ではない。 でも「高度を下げる」しか高山病の対処法はないので、仕方ない。 ボヤボヤしていたら肺水腫や脳浮腫になって死ぬ人もいるという。 僕は「生」の方向に向かって舵を切った…。 生きたかった、とか、まだ生きて〇〇がしたい、とかそんなことを考えて生きようとしたのではない。 体が勝手に「生」へ向かって舵を切った、という感じだった。 標高3877。ここに滞在して「山の生活」をすることを夢想してたけど、 僕はタッチだけしてとんぼ返りしてゆく。 うううーむ。 頭痛にさいなまれながらの下山。 なかなか大変である。 下山、と言っても道は平坦ではない。上がったり下がったりする。 そして下りは、自分の重さが体にかかるため、より力を使って体をコントロールしなければならない。 が、頭痛が激しく、脳がうまく働かない。 脳が体にブレーキをかけているような感じで、普段の半分くらいのスピードでしか動けない。 高度を下げれば高山病は軽くなるから、早く下がりたいのだが、ものすごくゆっくりしか動けなかった。 どうしようもないからそのままじわじわ下りてゆく。 ヨタヨタ歩いてるよ。 キャンジンの白旗。はためいている。 「白旗」をあげて、投降。 負け。 「負けてもいい」って 白旗から、聞こえた気がした。 「負けて、いちばん弱い存在で、それでいいんだ」 って昨年末から考えてたけど キャンジンの白旗も、そう言ってたようだ。 「いちばん弱い存在のまま 歩いて行け」 (*チベットの白旗は「負け」などは表してなくて、「聖性」を表してるのだと思いますけど。) ラムネを食べて、元気を出す。 8:00 Tea Shopにて 昨日も飲んだSeabuck Thron Juiceをまた飲む。 茶屋おやじさん、ありがとう。 天気がいいのが、取り柄です。 ラムネ最高。 この人。ものすごく重そうな材木を背中に乗せて、登ってきた。 細い道で、長い材木が岩に当たって、つかえて大変そうだ。 僕も大変だが、彼も大変だった。 僕は、頭痛は、ある。 発熱は収まっている。 が、吐き気がある。 吐き気がして、ウップ、ウィック、とやっていると、それがある瞬間、しゃっくりになった。 そしてしゃっくりが、止まらなくなってしまった。 困る。 しゃっくり下山というのは、困るのである。 なんか息が乱れるし、歩調も乱れる。 カッコよくもないし。 たのむ、しゃっくり、やめてくれ。 でも容赦なく襲いかかるしゃっくり。 息を長時間止める、などの方法で、いったん出なくしても、しばらくするとまた出てくる。 僕はときどきしゃっくりが止まらなくなるが、 ストレスと関係がある。 いま、猛烈にストレスを感じる状況であるし、しゃっくりが出ても仕方ないのかもしれない。 でも、嫌なのだ。 しかも、そのままランタン村に着き、ニマさんとの面会時間になってしまった。 しゃっくりをしたままである。 (ニマさんは、カトマンズで電話で話した中原さんに「会ってみて」と言われていた人) ニマさぁーん! しゃっくりをしたまま10分ほど面会。 ニマさんはお茶を出してくれた。 ニマさんはゲストハウスを経営してて、「泊まってけば?」と言ってくれたが、 「高山病で頭痛いので…ヒック」 としゃっくり混じりに辞去するしかなかった。 ニマさん、ありがとう。 ニマさんの宿 トラベラーズ ゲストハウス 頭痛は襲うが、キャラバンは進む。 キャラバンは行くんだ、 「いいか、オレ、 キャラバンは進むぞ。 死んでも」 自分に言い聞かせて、 頭痛としゃっくりの嵐の中を 歩き続ける。 「歩き続けろ」 そして、 歩き続けて7時間半。 13:30 3140m Thangsyap タンシャップ TIBET GUEST HOUSE に到着。 疲れきった。 ここに泊まろう。 宿のみんなが、気にかけてくれる。 特にこのばあちゃんは僕を見かけるたびに「ニコッ」と笑いかけてくれる。 (登りの時に立ち寄った時もそうだった) ニコッと笑いかけてくれて、僕も笑いかえす。 それだけで、元気が出る。 これは非常に深いチベットの叡智なのではないか。 じいちゃんは薪ストーブを焚いてくれた。 3877mから3140mまで、700mほど下りた。 頭痛は、なくなりはしなかったが、軽減した。 しゃっくりは、眠るときは、消えてくれた。 チベタンのみんなに囲まれ、非常に落ち着き、 のんびり過ごして、 「大丈夫かもな」という気分になってきた。 そのまま眠りについた。 #
by kazeture
| 2019-04-23 10:58
| ネパール2019
|
Comments(0)
ランタン谷 3日目 3500m→3877m
2019.4.1
6:10 ランタン村を出発。 歩き始める。 僕はヒマラヤでガイドもポーターも雇わず一人で歩いている。 過去二回(2009ムクティナート、2017マナン)もそうした。 僕は一人で歩けるからこそ、ヒマラヤを歩いている。 このばかでっかい山の中を自分の力だけでやって行きたい。 その試行錯誤をしたいがためにわざわざ来てる。 ガイドしてもらったりしたら面白みがない。 うまくやりたいとか、問題なく終えたいとは、思ってない。 間違えたり失敗したり挫折したり、 苦しんだり叫んだりコケたりしてもいいから とにかく自分一人で全責任を背負いこんで てくてくてくてくひたすらアホみたいに歩きたい。 だから、これでいいのだ。 どんどん歩いて、登って行く。 7:20 3530m Mundu ムンドゥ NIMA HOTEL。 8:30 Tea ShopにてSeabuck Thron Juiceを飲む。 Seabuck Thronという木の実がヒマラヤにあって、 そのジュースだ。 「これがSeabuck Thronやで」と教えてくれた茶店の親父さん。 ありがとー。 峠の上に立つ。 めざす、キャンジンゴンパ集落をバックに。 そして… 10:30 3877m Kyangjin Gompa キャンジンゴンパ 到着。 着いたあああああ!! この時点では、翌日4500mくらいの峠に登ろうかと思っていたのだが、 この3877mというのは一応の到達地点であるので とりあえず着くことができた とホッとした。 お茶を飲む。 ワイファイがあって、有料で、時間制限もあるが、使える。 このとき、新元号が「令和」であると知る。 部屋でねころび、ボーっとする。 疲れた。 暗くなってきて、やることをすべて終え、眠ろうとした。 すると、ガンガンと割れるように頭が痛くなってきた。 かなり激しく、猛烈に痛む。 悶え苦しむ。 さらに、時間が経つと、発熱しはじめた。 まず頭が発熱し、もうろうとする。 それから全身も熱くなってきた。 頭痛がして、かつかなり高熱で発熱してて、アタマがヤバい。 で。吐き気もしてくる。 もうー。困るよ。これ。 困ってても仕方がないんで、悶え倒す。 高山病である。 富士山頂小屋で泊まったとき、同じ頭痛と高熱に見舞われて七転八倒した。 ここは3877m、似たような標高だ。 寝ても寝ても眠れない。 頭の痛さと発熱が、生半可じゃない。 ヤバい。 このヤバさだと、もうヤバいよ。 下山だー! あーあ。 仕方ない。 夜明け前、僕は夜が明けたらすぐ下山し始めようと決意した。 #
by kazeture
| 2019-04-22 20:06
| ネパール2019
|
Comments(0)
|