風に連れられ旅をする… 旅人 清火(さやか)の写真+言葉
by kazeture


2017年 07月 20日 ( 3 )

入院2日目 病室での暮らし

2017年5月6日
入院2日目
ネパール ベシサハール 入院病棟にて

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ねむれた。

入院病棟のベッド、なかなか寝心地が良い。

僕の向かい側のベッドに、5歳くらいの男の子が入院している。
お母さんが泊まり込みで付き添っている。

その子が携帯電話か何かでテレビドラマのようなものを見ているのだが、
それが恐ろしげな戦闘アクションドラマなのである。
やたらと恐ろしさを掻き立てる演出をした、むかしのイクサのような、武将たちの戦いのドラマ。

僕でも恐ろしくなるような雰囲気のドラマを、5歳くらいのぐったりした病気の幼児が見ている。

病気の幼児が病室のベッドで見るのにふさわしいか?

もっとほんわかしたものを。

その時、僕の目に、何かほわほわしたものが映った。

キャラクターの顔が雲のように浮かんでグニグニ蠢(うごめ)いている。

ほわほわして、あたたかくて、カラフルで、おもしろく、笑えるような世界。

夢うつつの中で幻視した。空間にマボロシが映っていた。

それが、ないのなら、この手で作ろう。

僕は作ってみよう。

(この7・8月にカラー絵本漫画のようなものを描く予定)

8:40 バスーさんが来てくれた。

ナースが来て、「カウンターに行って」と言う。歩いて行く。

僕が歩けているのを見て、バスーさんも喜んでくれた。

おしっこの検査をする。
おしっこは「ユーリング」というようだ。

ベッドに戻る。
ドクターが来て、足をプニプニ押す。
僕は「プニるな!」とは言わない。プニプニが診察だから。
ドクターがバスーさんにネパール語で話す。
バスーさんが僕に日本語で
「明日の朝、ホテルに戻ります。それでいいですか?」と言う。
「あ、はい」
今日の夜もここか…。
一泊の予定が二泊に延びた。

まだ治療が充分ではないらしい。
僕的には「歩けるようになった」だけで、ものすごく充分なのだが…。
(まだ歩き方がギクシャクしている)

で、バスーさんが「今、何か要る?」と言うので
「ミルクティー」と答えた。
「ビスケットは?」と言うので
「じゃぁ、ビスケットも」と言った。
バスーさんは去った。
しばらくすると、ベッドに見知らぬ女性がやって来た。
ミルクティーとビスケット2袋を僕に差し出す。
バスーさんが注文して、この人が持ってきてくれたようだ。
僕が飲み終わるまで彼女は部屋の隅で待ってて、空コップを持って帰った。
きっとこの近くの商店の人なのだろう。

ドクターが来て、「Yourおしっこ、Burning!」と告げる。

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え? Myおしっこがバーニング?
もへぁ〜、おしっこが炎上してるんかいな。
「水をもっと飲んで!」と言われる。
了解でーす。

9:50 ウンコをする。
この病室の隅に、トイレ&シャワーの部屋が2つあり、片方は洋式トイレだ。
洋式、助かる…。

バナナとりんごを食べる。

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(足首のムクミがなくなってるなぁ)
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(今日も血管に液体注入されてます)

さて、この時日記に、今回のトレッキングで「何が大変だったか」について書いている。
以下、引用。

「今回、いろいろあったなァ。
『もうダメだ』と思ったのが
・1〜3日目の登り。しんどすぎ。
・マナン2日目 夜3:30 足首の痛さに叫び泣く。
・ジープ8時間ガタガタ道。
・標高下げたのに全く治らず立てず歩けず動けず。
…の4つ。しんどさ四天王。

もともと、はじめの登り8日間だけでももうバテバテで、どうしようもなかったのだ。
なのにそのあとに迫り来た苦難また苦難の連続。
いったい、こりゃ何なんだ。
精神の鍛錬にはなったよ。
苦難は精神を鍛える。
もうオレは異国で一人入院したって平気だ。
誰もオレを悪いようになどしない。」

引用終わり。

「誰もオレを悪いようになどしない」

そう、このベシサハールの病院の人々も、みんな優しかった。
僕を悪いようになどしなかった。
僕がヨタヨタしてるのを見ると、すぐ手を貸してくれた。
レントゲン室の技師や、ドクターたちも、みな率先して肩を貸してくれた。
体を使って助けることを厭わない人たち。
そして朗らかに笑う人たち。

彼らだったから、こんな異国の田舎のちび病院に一人で詰め込まれても、大丈夫だった。

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向かいの男の子の、お母さん。
いつも歌っている。子どもに向けて。
寝かしつけるように。
低く静かに歌ってる。
子守唄のように。
あれ、いいなぁ。
子どもは安心するだろう。
僕も安心する。
病室に流れる、静かな唄。

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「頭をフケだらけにして大地を疾走する
最後のトップランナー。」
何これ?(描いたけど、忘れた)
「最後のトップランナー」か…。
最後尾についていた人が、ふと気づくとトップランナーになってるような感じかな。

17:30 バスーさんが奥さんを伴って来てくれた。
ベジスープとチベタンブレッドを持って。
チベタンブレッド(美味しいと聞いていた)を初めて食べたが、ドーナツみたいで美味い。揚げてあるのか。

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バスーさんは「明日朝8時頃来るから、一緒にホテルに帰ろう」と言った。
そして奥さんと帰って行った。
ありがとう。

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そんな感じで、
入院2日目も終わってゆく。

穏やかに過ぎる。

明日はシャバに帰るぞ〜♪

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by kazeture | 2017-07-20 22:08 | ネパール2017 | Comments(0)

激痛4日目 痛みピーク、入院へ

2017年5月5日
ネパール・ベシサハールにて

一睡もできなかった。

右足先が痛すぎて、一睡もできない。
痛みが増している…。
前夜は、痛みを感じなくなる体勢をかろうじて見つけ、4時間ほど眠れた。
それが、できなくなった。
どんな体勢を取っても痛い。

これは、まずい。ヤバい。
と、思い始めた。

実際、一睡もしてなくて、体力的にもキツい。

うーん。

僕はその時、自分の状態をFacebookに投稿していた。
「凍傷だと思って、高度を下げ、足湯などで対処している」と。

すると、カナダにいる犬ゾリ師のFさんという友達が
「凍傷ではないと思います。凍傷ではない何かですので、至急医者に行ってください。私は軽度の凍傷になったことがありますが、様子が違います」とコメントしてきた。

Fさんは自転車で地球を一周した後でカナダに住み着いて犬ゾリに乗ってる、という経験豊富な人で、
その人の言葉には重みを感じた。

そうか、凍傷ではない…。
「凍傷ではない何か」
そう言われたら、そんな気がしてきた。
それで、医者に行こうと思った。

宿の主人バスーさんに言った。
「病院に行きたいんです」と。
バスーさんは数秒間考えたのち「わかりました」と言った。
そもそも、バスーさんは一番初めの段階で病院行きを勧めてくれていた。
で、バスーさんは「今日の午前中に行きましょう。私が連れて行きます」と言ってくれた。
「はい。ありがとうございます!」と僕は言った。

部屋で準備して待っていると、バスーさんが現れた。
「行きましょう」
「はい」
僕は水筒、手ぬぐい、パスポート、財布、ノートなどを入れた小さなカバンをぶら下げ、杖を一歩持って出かけた。
出かけた、と言っても、全然歩けない。
バスーさんと奥さんが両脇を支えてくれた。
で、宿の玄関から出る。
光がまぶしい。
僕がバスーさんに支えられてヨロヨロしているのを見て、
まわりのネパール人たちが近寄り、何かをワーワー言ってくる。
バスーさんが答えてる。
「病院に行くんだよ」と言ってるんだろう。
バスーさんは、自分のバイクに僕を乗せようとしていた。
バイクにまたがるのも、骨が折れる。
と、その時、立派な四輪駆動車に乗った男が「オレの車に乗れ。ポカラのでっかい病院まで連れてってやるよ」と言ってきた。
車は良いのだが、ポカラまでは行かなくていい。
すぐそこ(5分くらい)のベシサハールの病院まで、バスーさんと一緒にその車で送ってもらった。有料で。

そうやって、這々の態(ほうほうのてい)で病院に着いた。
平屋建ての小さな病院だ。
医師は2人、看護婦は4人くらい。
で、その医師2人(おっさん&若手)が全患者を診るから、「◯◯科」とかはない。
地域のおばあちゃんやら何やら、患者はけっこういる。
ベッドに寝かされる。
待っていたら、ほどなく診察が始まった。
「急患」のような扱いになっていたのかもしれない。
ドクターは「ワンピース」という漫画のTシャツを着た、めがね、もじゃもじゃ髪で色黒のネパールファンキー親父だ。
ドクターに聴診器を当てられて問診(バスーさんが通訳してくれた)される。
それから検温、心電図、レントゲン、血液検査、検尿。というふうに検査が進んだ。

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検温すると、熱があったようである。
「華氏103度」と言われた。
(あとで調べると、華氏103度は摂氏39度だった)
39度熱があったら気づきそうなものだが、僕は痛みにのたうち回っていて、それどころじゃなかったのだ。

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そして、検査結果が出た。
もじゃもじゃドクターは「セルライトだよ!」と言った。
へ?セルライト?
なにそれ?

「痛みの原因は、セルライト!!」

そして、
「インジェクショーン!!」と言って若手のイケメン医師が登場。
注射をおしりにズブリ!!と刺された。
うぎあああ!!

そうしたら…そのあと…
痛みが引いてきた。
あれっ??
と、不思議だった。
あんなに痛かったのに。
消えていく…??
奇跡のような気がした。
突然春風が吹いてきたかのような心地よさ。
ものすごく嬉しい。
しあわせって、こういうことなんだね。

痛み止めの注射。効くのですねぇ。
注射はインジェクションっていうんですねぇ。

インジェクショーン!!
(ロッキーが「エイドリアーン!!」と叫ぶ感じで叫びましょう。感極まってる表現です)

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痛みが引いた時の風景

そして、もじゃもじゃドクターは
「痛み引いてきた?」と言いながら僕の右足の土踏まずのあたりを
プニプニプニプーニ!!と突っつき、
「ふむ、プニプニしてるなぁ…!」という結論に至り、
「入院です!!」と言った。
ぽへぁ、入院かぁ。
「今すぐ入院治療します!」
ぼへぁ〜、今すぐかぁ。
「セルライト、入院治療で治るアルね。オーケーィ?」とかなんとか。
そうですか…。
たぶん一泊とのこと。
ドミトリーが一泊600円、個室が1500円ってことで、僕はドミトリーを選んだ。

そして、僕のネパール入院ライフが始まった。

「セルライトって何?」と思ったけど、この病院にはWi-Fi電波はなく、ネットで調べることはできない。
(入院中ずっとネットは無し。期せずして「隔絶」されることになった)

また、「セルライト」と告げられた時に通訳役のバスーさんはいなかったので、詳しくわからなかった。

セルライトって何だかわからないし、全般的に何がなんだかわからないけど、ゆだねるしかない。
実際、インジェクションで痛みは引いたし、治療の方向性は間違ってないってことだろう。
ただ僕がわからないだけで、わからないというのは不安はあるけど、今ここで、まかせる以外にどうしようもないのだ。

で、入院者用の大部屋に移る。車椅子に乗せられて移動。

5人部屋だった。

ほかに、子供や中学生くらいの人がベッドにいて、点滴を受けたりしている。

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ベッドに横たわり、しばらくすると、看護婦さんが来た。
そして、僕の腕の血管に針を差し込み、テープで貼り付ける。
血管に針が固定されたままになった。

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針には開閉式のフタが付いている。
そのフタを開け、注射器のようなものを装着し、液体をじわじわと僕の血管の中に入れてゆく。
気持ち悪い。
もともと平常通り動いている血管に突如何らかの液体を注入するのだから、なんか変な感じがしても仕方がないだろう。
ま、とにかく、それが治療だ。ということだ。
その注射を1日に2回打ち、飲み薬を服用。
あとは安静にしている。
それが僕のネパール入院ライフだった。

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病室の窓
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窓からの眺め
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時々もじゃ男がきて、僕の足裏をプニプニ押して行く。

バスーさんがりんご、バナナ、フルーツジュースを買って来てくれた。
これプラス水のペットボトルも枕元にあるし、完璧だ。

さらにバスーさんは18時にはダルバート(ネパール定食)も持って来てくれるという。自分の宿の台所から。
至れり尽くせりだ。

この病院では、食事は出ない。
ので、入院者にはまわりの家族などが食べ物を持って来るようだ。

バスーさんはほんとうに親切で、とても助かる。
なんか、ものを頼みやすい雰囲気がある。
僕は異国でひとりで入院してるわけだし、バスーさんのような人が付いていてくれて、ほんとうに良かった。

夕方。
足の痛みはなくなった(静止していれば)。
足指は、ピコピコ動く。
熱は引き、気分は良い。
食欲も戻った。

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バスーさんが持ってきてくれたダルバートを、おいしく食べた。

トイレに行く時、立って、歩こうとすると、まだ足裏は痛む。
それでも、歩けるようになった。

かなり、全体的に普通の状態に近づいている。
「普通の状態」のありがたみをかみしめる。

眠り…
痛みのない眠り。
が、久しぶりに訪れた。

痛みも寒さも不快感も、何もないよ。



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by kazeture | 2017-07-20 14:49 | ネパール2017 | Comments(0)

激痛3日目 独房での暮らし

2017年5月4日 
激痛3日目
ネパール・ベシサハールにて

朝、目覚める。
ということは、寝たのだな…。

右足先、くるぶしより先の部分、特に土踏まずのあたりが痛んで痛んで、どうにも寝苦しかったのだが、
いちばん痛くない体勢を発見し、それでなんとか眠ることができた。
たぶん午前3〜7時の4時間くらいは眠れたと思う。

痛みが増している。
なんで増すの?
減る予定なんですけど。
もうわけがわからない。
どうすりゃいいんだ。

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(その日のノートより)

それでも、僕はこの日の午前中はまだ、
「足湯とマッサージで治ると思う」と日記に書いている。

自分の力で、自然治癒力で、治す!
と思っていた。

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(足湯しました)

そしてこの日は一日中、朝から晩まで、独房(窓のない部屋)から出なかった。出れなかった。

立つことも、歩くことも、なかなかできず、
食堂にも行けないし、
トイレにもなかなか行けない。
行く必要のある時は、文字通り「這うようにして」トイレに行った。

這うようにして、トイレに行く。
って、なかなか、ありそうで、ない。
そういうことを体験する旅です。

バスーさんは時々様子を見に来てくれた。
「明日には、2階に移れるといいですね」と、バスーさんも、このまま回復していくことを信じてくれていた。

僕としても、ほんの少しずつでも、良くなっていると信じたかった。
けど、実際は悪くなっていってた。

初めはこの部屋で歩けたのに、歩けなくなった。
初めは立てたのに、立てなくなってしまった。

この日の午後から夕方には「這って」も行きにくくなり、
仕方ないから、オシッコはしびん代わりにペットボトルにするようになった。

なんで悪くなっていくのか。
わからないな…。
と思うばかりだった。

食欲はなかった。
でもバスーさんの宿にちょっとでも儲けが出るように、
スープや、お粥や、ラッシーを注文して食べた。

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(ベジタブル スープ)
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(バナナ粥)

部屋で、電気を消して、ベッドに座り、ボーッとしている。
ドアは施錠せず、半分くらい開いている。
通路を通る人は、中が見える。
通りながらフッと見ると、暗闇の奥から僕がボーッと見ている。
ギクッ!とするかもね。
普段はそこにいないはずの、わけのわからないものがいて、こっちを見てるわけだし。
通路は色んな人が通っていた。
注文の品を台所に届ける業者の人なども来てて、暗闇独房人(またの名を「どくぼう王」。「がんくつ王」に対抗)の僕を見てギクッとしていた。

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(その日のノートから)

この日、独房から出られず、食堂にすら行けず、外の風景を見ず、日光も見なかった。
だが、そんなことを嫌に思うヒマもなく、
ベッドで痛みにのたうち回っていた。

いったい、何なん?
何これ?
と思いながら…。

そうして、激痛3日目、トロンラゲストハウスの2日目も、暮れて行った。


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by kazeture | 2017-07-20 00:07 | ネパール2017 | Comments(0)