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風に連れられ旅をする… 旅人 清火(さやか)の写真+言葉
by kazeture
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サイゴン潜入

ベトナム南部のニャチャンという海辺ののんびりした町から
サイゴン(ホーチミンシティ)という大都会の
ど真ん中に、いきなり行った。

思えば3月12日頃にバンコクを出て以来3週間、
都会らしい都会には行ってなかった。
タイ北部もラオスもベトナム北部も、
すべてのほほんとした場所だった。

それがいきなりサイゴンの繁華街のど真ん中にバスは
突っ込んで行き、停まり、降ろされた。

夜だった。
光がきらきらきらきらしている。
ちかちかちかちかしている。
音はうるさく、バイクは走り狂い、
路面からなにかざわざわと音がするようだ。

そこで一瞬ぽけっとしていると、
闇の中から若いベトナム青年がサッと現れた。
「部屋さがしてんの?」
「あ、うん」
「部屋あるよ」
「いくら?」
「エアコンなしでもいい?」
「いいよ!」
「テレビなしでもいい?」
「もちろん!」
「じゃ、6ドル」
「6ドル?シングルで?」
「そうやで」
「シャワーは?」
「ついてる」
安い!
ぼくの集めた情報だと、
サイゴンは物価高でシングルだと10ドル以上も
しそうだったのだ。
で、ほいほいとついていった。

そこは旅行者たちが集まる通りの中でも
もっともど真ん中あたりだった。
その、喧騒の中を歩いていき、
若者は急に路地の中へと折れ曲がった。
なにも書いてない、なんの看板もない、
えらく細い路地だ。暗い。
そこをどんどん進んでゆく。
かなり奥まったところの一軒の家。
「ここだ」
若者が中に入っていく。
そこはどう見ても普通の家だ。
普通の家の、普通に生活してる中に
入っていく。家族らしき人たちがいる。
笑顔で迎えてくれる。
その2階に、部屋はあった。

ベッドがあり、扇風機は2つあり、トイレ・シャワーはきちんと
付いてる。汚くない。
狭いが、べつに問題ない。
「オッケー!」
決めた。
バスを降りて、3分後にはもうここに収まっていた。

値段が安くすんでよかった。
サイゴンでもそんなに金がかからずにやっていけそうだ。

そして、この、「間借り人」的な感じが面白かった。
間借り人というか下宿人というか、
ここで生活してる家族の様子を垣間見ながら
ひそかにぼくもここに混ざって暮らす、という感じが
気に入った。

この家の場所が繁華街のど真ん中にあり、
かつ路地の奥にあるので
あまりうるさくはない、というのも気に入った。

急にこの都市の底に潜り込んだみたいだった。
着くなりこういうことになって幸先がよい感じがした。

噂では、サイゴンにはこういう、きちんとした
ゲストハウスではないが「部屋貸し」をしてるところが
よくあるらしい。

さて、そのあと外に出てみた。
久しぶりの都会で、なんかドキドキする。
足の裏がモゾモゾする。
ので、夕食時だったが食堂に座り込む気にならない。
フランスパンサンドを買い、
食べながら歩き回った。
サイゴンのフランスパンサンドも、うまい。
旅行者、西洋人、東洋人、ベトナム人、
物売り、バイクタクシーの運転手、カフェの呼び込み人、
いろんな人がいろんなものを見たりいろんなことを言ったり
いろんなものを売ったり買ったり食べたりしている。
いつまでもぼくはぐるぐると歩き回った。

こうしてぼくはサイゴンに潜り込んだ。
by kazeture | 2009-04-03 15:17 | Comments(0)
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