風に連れられ旅をする… 旅人 清火(さやか)の写真+言葉
by kazeture
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合理的な女

頭の髪の毛が全部ヘビになってる女の人にメデューサというのがいるが、
今日、そんな感じの人とふたり連れになった。
この西洋女性をメデュ子と呼ぶ。

メデュ子と僕は、今日、バリ島の北海岸ロビナから内陸部のウブドへと行くミニバスに乗り合わせた。
ほかには乗客はいない。ふたりだ。

僕がまずミニバスの座席に座っていた。
つぎにすべての頭髪がヘビになってる雰囲気のメデュ子が乗り込む。
メデュ子は乗り込むなり、後ろの3人掛けを占拠し、前の席の一つを「がたーん!!」と折り畳んだ。
それが折り畳めるということを知ってる、初心者ではないヤツだ。
そして折り畳んでできた空間に長い両脚をのばしている。
で、「こうすりゃ合理的でしょーが!!」
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という
オーラを放っている。
言葉では言わないが、そんなオーラが漂ってる。

僕ら2人が詰め詰めに座るより、
ひとりが3席ずつ占拠し、しかもメデュ子は椅子畳みまでして空間を確保。
ふむ、たしかに合理的かもね。

でも…。
と僕は思った。
そんなに合理的合理的、合理的だからいいでしょって詰め寄られても困る。

なにしろここはインドネシアなのだ。

ここ、インドネシアでは、例えば5人乗りの車に人間10人が乗り込み、運転席にまで運転手以外の人がもう一人座り、運転手がわきからやりづらそうに運転する。
などという事態がよく起こる。

合理性とか誰も目指してない。
合理性なんか良くも、正しくもない。

ここでは、ただ、「そうなっちゃった。」ということが起こるだけ。
それがインドネシアだ。

そこに出てきたメデュ子。
まったくの対極だ。

この合理と非合理の真ん中に僕は浮かび、状況をみる。

文明の衝突。
興味深い衝突がここで起こっている。

僕はといえば、
「郷に入っては郷に従え」で、インドネシア式のやり方に順応しようとしている最中である。

メデュ子は、ただ、自分を押し付ける。
彼女が良いと、正しいと思ってることを、
やみくもに押し付ける。

そして、それが西洋というものだ。

その「西洋」の姿が僕には滑稽に見えた。

西洋は、自分らが先だ、自分らが正しい、自分らが良いと思い込み、
早くから外部に向けてなにかをギャーギャー言っていた。

だが、インドネシアでも、同じくらい昔から人はいて、
しずかに暮らしつづけていた。

インドネシアの人は、外部に、異国に対して、なにも訴えなかった。
ただ、自分の暮らしを営みつづけた。

なにも言わずに、しずかに暮らしていた人が世界中にいっぱいいたんだよ。

西洋は、たしかに、最初に、自分らのやり方を他者に押し付け始めた。

だが、それは、はたして、正しいと言えるのか。

インドネシアが、徹頭徹尾他者を変えようとしなかったのと、
どちらが高貴な態度と言えるか?
をよく考える必要がある。

侵略・殺戮・支配しようとして異国で暴れまわるのが正しい。
という態度を、そうでない静かな国の人々がいったいどんな目で見ているか、
を想像してみる必要がある。

…と、こんなふうなことを僕は考えていた。

車窓の外は、山岳部の、美しい風景が繰り広げられていた。
が、メデュ子はまったく見ない。
「見るの、いや」って感じで拒否してる。
見るものすべてが面白い状態の僕とは、これまた対極にある。

西洋のバックパッカーには時々こういう人がいる。

西の果てからえんえんと旅を続けて、ようやく3年目にしてたどりついたインドネシア…
しかしその時点でもう、「見すぎた」「見飽きた」状態になっており、
完全に飽き、ダレているのだ。

メデュ子がどんな経緯でここに至ったのか、
僕は知らない。

だけど、これだけ見るのを拒否してる人は、
うとましい。
と僕が思うか思わないうちに、
ひとつのイメージが浮かんだ。

このミニバスが崖から転落して、転落まぎわに運転手だけ脱出。
メデュ子と僕だけが谷底に落ちた。
気がつくと…火山大噴火により、地球の生命はすべて失われ、メデュ子と僕しかいない。

というふうになることだって考えられるのだから、
なるべく仲良くしとこう。

とかなんとか思ってるうちに、
バスはウブドに到着した。

僕とメデュ子は何の挨拶も交わさず、
あっさりと別れた。

そして僕はインドネシア的混沌のるつぼ、
すなわち宿の客引きたちとのやり取りの中へと
入って行った。

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by kazeture | 2017-03-06 23:31 | インドネシア2017 | Comments(0)
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