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風に連れられ旅をする… 旅人 清火(さやか)の写真+言葉
by kazeture
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山歩記 3 夜と朝

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万二郎岳(1300m)と伊豆最高峰の万三郎岳(1406m)を越え、ブナの森をくぐり、八丁池に到着したときには
もうヘトヘトになっていた。

もう歩けない。もう限界。というぐらいに。


しかし着いてみた八丁池はとても静かで穏やかで、休んでると身心もいい感じにホワンとしてきた。

こういうなにもない誰もいないところでひとりきりで一泊できるというのは、心おどる。



八丁池のそばの木立の中で眠ることにして、今回あたらしく買ったシェルター(簡単なテントのようなもの。すごく軽い)を設営する。

夕食は伊東駅前で買ったカロリーメイトのようなもので済ます。
今回は軽量化最優先のため、コンロ、鍋、米などは持ってきていない。


あたりが真っ暗になった。
池のほとりでたたずむ。
暗くなるにつれて霧が出てきていた。




突然、森のほうから「ドスッ!ドスッ!」という大きな足音が聞こえた。

えっ?! なんだ?

その足音の大きさからして、ゴリラかクマか巨人かイェティ(雪男)かなんかのような気がした。

硬直してしまった。


しかし考えてみるに…、どうも、大きな鹿らしい。

山でテントを張っていると、鹿というのはよく偵察にくる。

ぼくはここでは闖入者だ。おとなしくしとこう。

そそくさとシェルターにもぐりこむ。

その後、いろんな方角から鹿(と思われる)の鳴き声が聞こえた。

夜に、池のほとりに出てきて食べるものを探しているようだ。


さてぼくは疲れもあり、19時か20時くらいには眠ってしまった。




夜中、目を覚ました。

ん…?

まわりが明るい。

あかるすぎる。

まるで昼間かと錯覚するほど。

時計を見ると0時過ぎだ。

なんなんだ、この明るさは?

星か!

星しか考えられない。

人工の明かりは何もない場所だ。


外に出てみた。

木々のすき間を貫いて、ギラッと銀色の光が目を射た。

あぁ、月か!


池のほとりに出る。

黒い森の縁に突き刺さるように巨大な半月が銀色に光っている。

すごい光だ。

ぼくの影もめちゃくちゃくっきり出ている。

そして、星もすごい。

月にも負けず、星たちも光りまくっている。

霧もなくなっていて、雲もない。風もない。音もない。

静かな夜中の湖畔で星の光に降られている…。

しばらくぼうぜんと突っ立ったあと、またシェルターにもぐりこんで眠った。

なんだかしらないが、不思議な感じだった。




さて朝になると、もうひとつのスターが目に飛び込んできた。太陽だ。

森の端から太陽があがり、池にも映り、ふたつの太陽があたりを照らし、あたためる。

夜露に濡れたシェルター、寝袋、マットを陽の光で乾かす。

すべてをザックにしまいこむと、ぼくは最後の歩きを歩きだした。


展望台があり、登ってみた。

快晴の空のもと、緑の山々が見える。

そして八丁池の向こう側に、富士山が顔を出している。

こんちわ〜。富士山こんちわ〜。


八丁池から天城峠へ。

この道筋にもたくさんのブナが生えていて、目を楽しませてくれた。

そして最後にたどり着いた天城峠にも二本の大きなブナがあった。

なんだか「天を支えてる」ような枝ぶりだ。

昔から峠を往来する旅人たちを見守ってきたんだろうな、と思った。



天城峠というバス停から河津方面へ下るバスに乗る。

さぁ河津温泉に入るぞー。

心地よい疲れに包まれていた。




さんぽ記 おわり
by kazeture | 2010-09-23 14:51 | Comments(0)
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